体力と忍耐力!?通訳に必要なことを松本美香子さんに伺いました
仕事に誇りを持ち、自分を高めることが好きな人が集う。日々新鮮な経験ができる通訳ガイドの仕事
お客様からの刺激が自分を育ててくれる
―日常の仕事について教えてください
私たち通訳ガイドは、通常フリーランスで働いています。旅行代理店と契約したり、通訳や旅行専門の派遣会社に登録したりして、仕事の依頼をいただきます。その仕事が条件に合えば、お仕事させていただくという流れになります。旅行代理店で作成する行程表に従って、バスツアー等で案内することが多いですが、旅行者の要望に応じて自由に観光地等を巡ることもあります。
通訳ガイドは様々な国の人と会う仕事なので、日々発見や驚きがあり、新鮮な気持ちで仕事に向き合えます。芸術などについて、お客様から教えていただくこともあり、もっと学びたいという意欲を高めてくれる環境があるのが、通訳ガイドの一番の魅力かもしれません。まわりの同業者を見ても、自分の仕事に誇りを持ち、自分磨きに熱心な方ばかりで、自分を高めることが好きな人には、ピッタリのお仕事だと思います。日本観光通訳協会(JGA)が主催する、通訳案内士の知識や技術の向上を目指した研修にも、積極的に参加される方が多いです。
通訳ガイドには体力と忍耐が必要
―通訳ガイドをしていて大変なことは?
通訳と聞くとかっこいいと思われるかもしれませんが、体力と忍耐が必要な仕事です。たとえば、ウォーキングツアーや富士山の登山などのガイドを引き受けると、ずっと歩き続けなければならないこともあります。本当に疲れてたとえ体調が悪くなっても、通訳ガイドは楽しい雰囲気を作っていく役割も担っていますから、泣き言は言えませんし、常に笑顔でいなくてはなりません。さらに、文化が違う国の方が相手なので、予想外のことも起こりますし、急病人の対応が求められることもあります。また、通訳ガイドは基本、個人事業主なので、経理なども自分でやることになりますし、社会情勢や時期によっては、収入が安定しないこともあります。ガイド以外の仕事、例えば通訳や翻訳、英語教師を兼業されている方もいます。
資格取得より現場の方がずっと大変
―今は資格なしで通訳ガイドはできませんが、今後無資格でも可能になるそうですね
通訳案内士の資格を取ることよりも、通訳ガイドの現場で仕事をすることのほうがもっと厳しいです。ですから、法改正で無資格でも通訳案内で報酬が得られるようになっても、自分の実力を知るという意味で、資格には挑戦したほうがいいでしょう。通訳案内士の外国語の種類は、英語を含め10ヵ国語があります。資格取得には、語学以外にも旅程管理や関連法の知識が不可欠です。
通訳ガイドの魅力の一つは、何歳からでもなれるし、定年がないことです。私も次男を出産後に、今の仕事に就きました。現在、高校生の方が、通訳ガイド以外の道に進んだとしても、将来結婚等で自分の状況が変わったときに、通訳ガイドという仕事を、思い出していただけたらうれしいです。
通訳案内士(通訳ガイド)
松本 美香子さん
大学卒業後、一般企業に就職したが、仕事の中で語学の必要性を感じて、オーストラリアへ留学。貿易関係の企業を2社経た後、第二子の出産をきっかけに仕事と子育てを両立する難しさを感じ、働き方を考え直すことに。以前から語学や旅行に興味があったことから、通訳ガイド※を目指して専門学校に入学。通訳案内士(英語)の資格を取得し、通訳ガイドとして活躍中。日本で最も伝統ある通訳案内士団体『一般社団法人日本観光通訳協会(JGA)』の会員で、新人研修会の講師も務めている。
※正式名称は「通訳案内士」。「通訳ガイド」は一般的な通称。なお、平成30年1月に通訳案内士法の一部改正が施行されることに伴い、「通訳案内士」の名称は「全国通訳案内士」に変更される。