ギタリストとフルーティスト。森永さんと松村さんの間にある信…

演奏だけじゃない、全ての部分で「やってよかった」仕事をしようと思っています

国立音楽院で出会った二人

松村 僕が音楽を本格的に始めたのは高校生の時です。学校には吹奏楽部がなくて、代わりに紙芝居部があったんですけど、そこで紙芝居を読み上げる時にかける効果音やBGMを、ギターなどの楽器を使って作っていました。卒業が近づくと、自分はギタリストをめざしていたんですが、ギター系の学科がある大学が見つかりませんでした。それで、ジャズにも興味があったので、ジャズとギターが学べる国立音楽院に進学をしました。

 

森永 僕も4歳の頃からピアノをやっていましたが、本格的に音楽の道をめざすようになったのは20歳を過ぎてからですね。高校卒業後はアルバイトをしつつ、絵を描いたり旅をしたりと色々していましたが、父が病気になったことをきっかけに、好きな音楽をしっかりやってみようと決め、国立音楽院に通いました。そこで彼(松村氏)と出会って、一緒に演奏をするようになりました。

練習、仕事、レッスン、アルバイト…音楽をあきらめず、食らいつく毎日

森永 今の仕事につくまでは、在学時から音楽の仕事を学校に紹介してもらって、僕も彼もそれを少しずつこなしていきました。

 

松村 最初のうちは学校説明会の来場者に向けた演奏をやって、お金をもらいました。あとはカルチャーセンターでの音楽講師や、レストランや結婚式場でのBGM演奏といった仕事をよくやりました。練習、仕事、レッスン、ライブ活動という毎日で、さらに最初のうちは生活のためにアルバイトもしていました。

 

森永 そのうちにだんだんと音楽関係の仕事が増えてきて、ミュージシャン一本で食べていけるようになりました。

 

松村 そうなるまで大変でしたが、頑張らないと上手い人たちに置いていかれて淘汰されてしまうので、頑張らざるを得ませんでした。学校で一緒に音楽を学んだ人たちも、8割くらいが自分には向いてないと思ってやめていきました。ですが、そこであきらめず食らいついた人たちは、僕たちを含めて今もこの業界に残っています。

声がかかればレコーディング まる一日のときも2時間のときも

松村 今の仕事は、ミュージシャンの仲間や作曲家の人から呼ばれて、演奏やレコーディングに行く形が多いです。内容はテレビ、Web広告、CM、映画、アルバム収録とかさまざまです。まれに映像監督やプロデューサーの人に推薦されて、ということもあります。

 

森永 僕たちはこういう仕事ですから、土日や祝日というのはあまり関係ないですね。特に、イベントやライブの仕事の時は土日が多いですね。地方で仕事する場合、移動に往復一日かかって泊まり込んで、仕事の実時間は1~2時間ということもあります(笑)。最近はライブやフェスが人気で、イベントの数も増えて、おかげ様で全国いろんなところに出かけています。

 

松村 一日のスケジュールだと、今の僕の場合、レッスンが多いですね。朝起きて午前中は練習して、午後はレッスンに行って、予定があれば夜にライブをして。レコーディングの場合は朝が早くて、そこから一日かかることもあります。朝10時や11時にスタジオに入って準備をして、昼過ぎから夜まで録って、それで終電までに上がれればいいかな、という場合も多いです。逆にテレビの劇盤などを作る時は、2時間程度で終わったりもします。

ただ楽器が上手くなることよりも人と人とのつながりを大切にする

松村 仕事で心がけていることは、メールの返信を素早くすることです(笑)。結局音楽の世界は、人と人とのつながりなんです。人との出会いを大事にするとか、他人を傷つけたりしないとか、そういうことは本当に大事だと思っています。昔は、楽器さえうまければ仕事をやっていけるだろうと思っていたんですけどそんなことは全然なくて。楽器がうまいことよりも、人付き合いをしっかりやることの方が仕事において大切なんです。

 

森永 僕も最近は、演奏だけじゃない、メンバーの選定や交渉も含めた全ての部分で、「やってよかった」と思える仕事をしようと心がけています。このイベントはこのメンバーにお願いしてよかった、この人と一緒にやれてよかった。そんなふうに、音楽だけでなくコミュニケーションなどの全てで力を尽くすことが、次に続くと感じています。

信頼感と緊張感 停滞しない二人の関係

森永 ミュージシャンとしてこの二人で長い間一緒にやってきましたが、それで一番良かったことは、停滞しないことですね。すぐ近くで彼が演奏していたりすることで、「あいつもやってるな。俺もさぼらず頑張ろう」と、自然と襟が正されるんです。

 

松村 信頼関係と緊張をちょうどよく保てる距離感というものが、お互いにとっていいモチベーションになるんです。

 

森永 今後は、ドラムのようなリズム楽器をやってみたいですね。あとはサックスかな。自分のユニットではいろいろ実験的なこともやっているんですが、それに加えて、これからもさまざまなジャンルに挑戦してみたいです。

 

松村 今の僕はアコースティック寄りの楽器を色々とやっていますが、正直それも飽きてきて(笑)、DTMなどを使った曲作りをもっとやって、自分の演奏に混ぜていきたいと思っています。新しいことは何でもやってみたいですね。仕事の幅も増えますし。

音楽業界をめざす高校生へのメッセージ

 

音楽の世界は仕事もいろいろ 頑張ればしぶとく続けられる

松村 とにかく音楽を続けてほしいですね。仕事となるとやりたくないことも色々ありますが、それでも続けていける人は自分で納得のいく仕事ができるようになりますし、自分に合った音楽仲間とのつながりも増えてきます。

 

森永 音楽と一口に言っても、本当にいろんな種類の仕事があるんです。メジャーで成功しなけりゃおしまいとか、そんな世界ではありません。その中から、本当にやりたい仕事を見定めて頑張れば、意外としぶとく続けられますよ(笑)。

ギタリスト
森永 達哉さん

 

ギタリスト。国立音楽院卒業後、様々なアーティストのサポートやライブ活動を行うかたわら、ジャズミュージシャンとしてライブも精力的にこなす。自身が参加しているバンド「デルソール」では作曲・編曲・レコーディングエンジニアも担当。

 

フルーティスト
松村 拓海さん

 

フルート演奏者・作曲家。音楽ユニット「+81」リーダー。国立音楽院卒業後、ジャズを軸にテレビやCM音楽の演奏や制作、多くのアーティスト作品への参加などジャンルを問わず活動。レッスンや音楽教育活動にも力を注いでいる。